深夜MIKAのカフェタイトル

パッサージュ・ブラディ/PASSAGE BRADY



パリ10区は、サンマルタン運河をのぞいてはとりたてて見るべきものもない移民の多い界隈だが、そこに私が最も熱心に通うレストラン街がある。パリに来てまだ間もない頃、カメラを片手にパッサージュ・コレクションをして歩いていた時に、ストラスブール大通りとフォーブール・サン・ドニ通りを結ぶこのパッサージュを見つけた。

ベンヤミン・ブームでにわかに脚光をあびたパッサージュだが、2区には比較的数が残っていて、オペラ寄りにはショワズールやヴィヴィエンヌ、コルベールなど有名なものや、リニューアルされたプランス、かなりな規模のパノラマなど探索も楽しい。そして東にはグラン・セール、ケール(現存のものではパノラマとならんで最も古い)、ポンソーとあり、そのままサン・ドニ門をくぐると、そこが10区。

まずパッサージュ・プラドと娼婦たちがむかえてくれる。しかし日中から立つ娼婦をめずらしいからとじろじろ見てはいけない。目的地はその数百メートル先のパッサージュ・ブラディである。この界隈はこのパッサージュを中心にインドやパキスタンからの移民の街として有名(ついでに娼婦が立つ地域としても有名)で、安いインドカレーが25Fくらいから楽しめてしまう。

第1次パッサージュ建設ラッシュが終わる1828年の4月15日に開かれたこのパッサージュも、最初の移民がやってきた1973年以来、すっかり彼らに占拠されてしまい、今のようなインド料理レストラン街に変身してしまった。残念なことにパッサージュ自体の保存状態はひどく、ガラス屋根が今にも落ちてきそうである。1993年に修復が決定されたが、未だほったらかし。そんなパッサージュの状態とは裏腹に、レストランはたいへんな人気でいつも賑わっている。修復とカレー、天秤にかけられないが、私がいる間は、カレーのほうがいいな・・・。