ラコスト村で研修を
春の陽気に誘われて、南の地方を旅してきた。正確に言うとプロヴァンス地方のヴォクリューズ県、その中でもリュベロンと呼ばれる辺りの4つの集落(アプト・セニョン・ボニウ・ラコスト)と他県のアルルとニームを訪れた。リュベロンには中世からの歴史を脈々と受け継ぐ、それも石で出来た集落がたくさん残っているのだ。フランスに来てからこれらの集落に魅了され、今では巡礼者のように少しでもたくさんの集落を見て回りたいと思っている最近の私である。
それでもラコスト村へも寄ってみようと思ったのは、ボニウの宿泊先のテラスからその姿を見てからだった。ボニウから最も近いこの集落(約6キロ)へも、歩くと2時間半程度かかるが、限りなく続く自然の中を散策するのは、なかなか心地よい経験である。このラコスト村の頂上にはサド・マゾの語源となったサド侯爵が18世紀に相続した城が、廃墟となって今も残っている。ここで彼が行なった数々の悪事を考えると、少々身震いのする思いだが、この廃城のすぐ下に岩を掘っただけのようなアトリエがあり、そこで作品を作り続けている彫刻家ロベール・ブランさんに出会った。
彼の扱っている軟らかく可塑性のある白い石は、南フランス(通称:ミディ)で取れる石灰岩で、これらはこの地方の集落建設にはもちろん、19世紀のパリ大改造の時にも大いに利用されたというから驚いた。「その時すでにアヴィニヨン(南仏の玄関口)〜パリ間には鉄道があったんだよ」とロベールさんは親切に説明してくれる。修復家でもあり、学校の先生でもあるロベールさんは、この地方でこの石を扱う彫刻家としては最後の一人となったそうだ。その技術を伝承するために、一週間単位の研修を一年中受け付けている。興味と勇気のある人は、チャレンジしてみては?
M. Robert BLANC
Rue de la Frescado 84480 LACOSTE FRANCE